★下記は2018年10月頃の症例です(2021年1月現在)
現病歴:30代女性
体外受精した受精卵を子宮に移植し、その直後に来院。今回で4回目であるという。過去3回の移植は鍼灸など様々な治療を試みてきたが、受精卵が「着床」する事はなく残念な結果に終わっていた。
病証:肝虚陽虚証
脈診および月経時に下痢を伴う…などの症状から肝虚陽虚証と判断。肝経は生殖器をめぐっており、陽虚による冷えが肝経を通じて子宮を冷やした結果、受精卵の着床・成長を妨げた…と考えた。従って、肝虚陽虚証に対する治療と、気血生成を促す治療を行う事とした。
施術:ポイント流注マッサージ
①肝虚陽虚に対する配穴:太衝、太渓、肝兪、腎兪
②気血生成を促す配穴:足三里、脾兪、胃兪、血海、三陰交
③補助穴:中脘、天枢、気海、合谷、委中。大腸兪に灸頭鍼3壮
④素問『骨空論』には、膀胱経と腎経の一部が督脈の一枝として記されている。そしてその督脈は胞中(子宮)を巡っているので、子宮の気血循環の改善を目的に膀胱経と腎経のマッサージを行う
コメント:上記のような施術を2回行い、3回目の来院時に「着床していました。このまま上手く成長してくれれば良いのですが、それまでは安心できない…とお医者さんに言われました」と聞かされました。しかしその後、その患者様は来院しなくなってしまったのです。また経過報告もなかったので、当然私は「ああ、ダメだっかのか(T_T)」と落胆していたのでした。しかし約3年が経過したある日、「無事、出産する事ができました」とその患者様が再び来院されたのです。なんとあの時の受精卵が上手く成長し、出産に至ったのだそうです。本当にビックリしました! そして今回はさらに2人目の出産をすべく受精卵を移植した…との事でしたので、今回は正経流注マッサージを主体とし、補助的に気血生成を促す経穴に鍼施術を行いました。前回同様、上手くいってもらいたいものです。