
五臓の病証⑤ー肺
更新日:3月14日
五臓の病証(全6回)。第5回目は「肺の病証」についてです。今、世界はコロナ問題に悩まされています。東洋医学においてコロナ感染症は「肺の病証」として捉えます。
(1)肺の働き
肺の働きは?…と聞かれ、まず思い浮かぶのは「呼吸」でしょう。勿論、その通りです。しかしこれは、肺に「気の運行を調節する力」があるからこそできる事なのです(これを気を主る(つかさどる)と言います)。気には生理物質を動かす力があります。例えば血を全身に送る際、主として働くのは「心」ですが、心の力だけでは不完全で、そこに肺の「気の運行を調節する力」が加わる事で、はじめて血を正常に動かして全身へと送る事ができるのです。肺が「相傅※の官」と呼ばれる所以は、肺が心の血循環作用を助ける存在だからです。
※相傅(そうふ)=助けるの意
(2)肺の病証
では「肺の病証」の解説をしますが、ここでは「肺虚の病証」と「肺そのものの病証」の2つに分けます。
①肺虚の病証
普段私達の体表には陽気が循環しており、外界の寒気などから身を守ってくれています。身を守るその陽気を衛気(えき)といいます。実はその衛気の循環を調節しているのも肺なのです。従って肺虚とは、肺の力が弱まり体表の衛気循環が悪くなった状態を言います。
では「肺虚の病証」とは何でしょう。それはズバリ悪寒と発熱です。肺虚の際に何らかの原因で衛気循環がさらに悪化すると悪寒発熱が起こるのです。衛気は熱性の気ですから、その量が少なくなれば悪寒、循環が止まり停滞すれば発熱…というワケです。これはかなり大雑把な説明なので、もう少し詳しく知りたい方は、過去ブログ「悪寒と発熱」をご覧下さい。ちなみに体表に発生したその熱が他部位に波及すると、さらに症状が変わっていきます。そんな事について書かれているのが「傷寒論(しょうかんろん)」という古典です。
②肺そのものの病証
他部位で発生した熱や冷えの波及で起こります。熱の波及に関しては「上熱下寒」でも起こり得ます。熱や冷えの侵入を許してしまうのは肺の力が弱まっているからなので、これも広い意味では「肺虚の病証」と言えるかもしれませんが、まあ、それはさておき。
肺に熱が多くなった状態を「肺熱」、肺が冷えた状態を「肺寒」といいます。どちらも激しい咳、呼吸困難、胸の痛みなどが現れますが、肺熱では熱の所見(例:のどの乾燥、粘った痰)、肺寒では冷えの所見(例:冷えると症状が現れる、水様性の痰)を伴います。
以上が「肺の病証」です。悪寒発熱に関しては大変複雑であり、私自身も完全に把握しきれていません(泣笑)。これからも勉強は続けていきます。それより今は、一日も早くコロナが収束してくれる事を願うばかりです。鍼灸・マッサージで免疫力を高めるのも感染予防の一つですので、是非、当院をご利用下さい。次回はいよいよ最終回「腎の病証」です。